画像検査とデバイス

条件付きMRI対応循環器デバイスが入った患者さんのMRI検査に関して

「人工内耳や神経刺激装置といった電子機器が体内に埋め込まれいると、MRI検査は禁忌」、ということはよく知られていると思います。

ただ、ペースメーカーなどの一部の循環器デバイスは『条件付き』でMRI検査が可能となっており、この『条件』に放射線科医は強く関わっています。

そこで今回は、条件付きMRI対応循環器デバイスを埋め込まれた患者さんのMRI検査、について記事にしました。

MRIと循環器デバイスの経緯

従来は、心臓埋込み型電気的デバイス(Cardiac Implantable Electronic Devises:CIEDs)も全てMRI検査が禁忌でした。

その理由は、MRI検査を行うことでデバイスに様々な不具合が生じるという報告があったからです。

*予想されるデバイスへの影響*

・リードの発熱:心筋組織の損傷
・リードに電流が発生:意図しない心刺激
・オーバーセンシング
・デバイスのリセット
・本体及びリードの回転、移動

非常に稀ですが、死亡事故の報告もあります。

2012年医療機器メーカーの日本ライフラインが、日本で最初にMRI対応型のペースメーカーを販売したことを皮切りに、各メーカーがMRI対応の循環器デバイスを扱うようになりました。

ただし、あくまで条件付のMRI検査が認められているだけで、何も準備を行わなくても検査可能というわけではありません。

『MR Conditional』であって、『MR Safe』ではないのです。

米国材料試験協会により、医療機器のMRI検査における安全性は、3段階のカテゴリーで表されるようになっています。

・MR Safe(MRI安全):どんなMRI環境下でも危険性がない。
・MR Conditional(条件付きでMRI可能):特定のMRI環境下で、特性の条件の下で検査可能。
・MR Unsafe(MRI危険):すべてのMRI環境下で危険性がある。

条件付きMRI対応循環器デバイスの種類

MRI対応の循環器デバイスとしては、以下のようなものがあります。

・ペースメーカー

・リードレスペースメーカー

・ICD(埋込み型除細動器)

・S-ICD(皮下埋込み型除細動器)

・CRT-P(両室ペースメーカー)

・CRT-D(CRT-P+除細動機能)

当初はペースメーカーだけでしたが、月日を重ねるごとに様々なMRI検査対応デバイスが販売されています。

MRI検査を行うための『条件』とは

MRI対応循環器デバイスが埋め込まれている患者さんにMRI検査を行うには、特定の条件を満たす必要があります。

1.基準を満たした施設で、

2.所定の研修を受けた放射線科医、循環器医、診療放射線技師、臨床工学技士のもと、

3.デバイスの設定を変更し、

4.デバイスごとの指定された設定でMRI検査を行う。

順番に解説していきます。

条件付きMRI対応循環器デバイスの施設認定基準

日本医学放射線学会、日本磁気共鳴医学会、日本不整脈学会といった関連学会が策定した、『MRI対応埋込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査の施設基準』では、施設基準は以下のように定められています。

1.放射線科と循環器内科あるいは心臓血管外科を標榜していること。

2.条件付きMRI対応CIEDsの使用説明書に記載された条件で検査が行えること。

3.磁気共鳴専門技術者あるいはそれに準ずるものが配置され、MRI装置の精度及び安全性を管理していること。

4.CIEDsの十分な診療経験があり、デバイス管理が可能であること。

5.関連学会が監修し製造販売会社などが開催する該当機器の適切で安全な使用法に関する『所定の研修』を終了していること。

参考:MRI対応埋込み型不整脈治療デバイス患者のMRI検査の施設基準

条件付きMRI対応循環器デバイスを検査するための研修

以前は、メーカーが独自に研修や施設認定を提供しており、各メーカーごとに研修を受ける必要がありました。

しかし、2017年に業界統一の研修サイト(『不整脈デバイス患者のMRI検査情報サイト』)が作成され、このサイトで研修を受講する形に変わりました。

各学会(日本医学放射線学会、日本磁気共鳴医学会、日本不整脈学会)が監修に携わっており、全国のMRI検査に対応している病院も検索することができます。

講習自体は、上記サイトで23分48秒の動画を見るだけです。

デバイスの設定変更

MRI対応循環器デバイスは、検査前後で作動状況を確認し、設定を変更する必要がります。

検査前後での確認は循環器内科医、設定変更は臨床工学士が行うことが多いです。

重要なことは、検査中は通常と異なる設定になってる、ということです。

ペースメーカーであれば非同期モード(決まったレートでペーシングのみ行う)やOFFモード(ぺーシングを行わない)に設定されます。

OFFモードの時に自己脈が出なくなると、ペーシングが行われないため心停止となる可能性があります。

ICDやCRT-DではVT(心室頻拍)やVF(心室細動)の検出・治療機能がoffとなります。

そのため、万が一VTとなっても、除細動は行われません。

検査中は心電図でモニタリングを行い、除細動器も準備しておく必要があります。

MRIの撮像条件

MRIの設定は厳密に規定されています。

1.5Tなのか3T対応なのかといったことから、アイソセンターの配置、最大傾斜スルーレート、空間最大傾斜まで様々です。

非常に細かく決まっており、その都度確認するので十分です。

各メーカーのホームページにも記載がありますが、『不整脈デバイス患者のMRI検査情報サイト』に『MIR対応組合せ検索』という機能があります。

メーカー(アボット、日本メドトロニック、日本ライフライン、バイオトロニックジャパン、ボストン・サイエンティフィックジャパンの5社)やデバイスの種類、本体モデル番号などを打ち込めば、対応する装置、設定が出てくるようになっています。

まとめ

現在ではMRI対応の循環器デバイスが主流となっており、高齢化に伴って埋め込まれた患者さんのMRI検査も増えると思います。

他科の先生から相談されることもあるでしょうし、何よりMRI検査を行う条件として、所定の研修を受けた放射線科医が必須です。

研修自体は23分と短い動画で、また非常によくまとまっているので、ぜひ一度見てみて下さい。