MRIの基本とポイント

MRI検査時の発熱:ヒートテックを着てはいけない理由

MRI検査を受けると、一定数の患者さんは『暖かく感じた』という感想を言います。

これは基本的に必発で、MRI検査を受けると程度に差はあるものの、体温は必ず上昇します。

通常は気にならない程度ですが、検査着が汗だくになる人も中にはいます。

この体温上昇ということが、実はMRI検査時にヒートテックを着ては行けない理由に繋がります。

今は多くの人が、冬場にヒートテックを始めとする吸湿発熱繊維性のインナーを着ていますので、患者さんに聞かれることもあると思います。

今回の記事で解説していますので、何かの参考にして下さい。

MRI検査では体温が上昇する

MRI装置は電子レンジのようなもの

MRIでは、身体の近くにある送信用コイルからRFパルスという電磁波を出し、体内の水素原子(プロトン)を励起させます。

励起させることで信号を発生させ、装置の中にある受信コイルで収集しています。

このRFパルスを受けることで、体内で熱が発生します。

発熱のメカニズムは複雑ですが、基本的には生体組織でのイオン伝導の喪失によると考えられています。

厳密には少し違う所ありますが、『電子レンジと似たようなもの』という認識で、大きくは間違っていません。

体温上昇の限度は1℃

通常、RFパルスによる体温上昇を自覚することはありません。

0.1℃や0.2℃といった程度の体温上昇であり、身体に備わっている体温調整機能でほぼ相殺されるからです。

温度上昇の上限値や身体の各部位の温度限度は、あらかじめ決まっています。

 

体部上昇温度 頭部温度 胴体温度 四肢温度
通常操作モード 0.5℃ 38℃ 39℃ 40℃
第一次水準管理操作モード 1℃ 38℃ 39℃ 40℃
第二次水準管理操作モード >1℃ >38℃ >39℃ >40℃

参考:IEC規格(改訂第三版)より一部改変

通常の検査で使うのは第一次水準管理操作モードまでですので、体温上昇の限度は1℃です。

これはMRI装置側での設定で、検査中に実際に体温を測定しているわけではありません。

楕円形の形態のものを検査するという仮定のもと、患者さんの体重を打ち込むと設定による体温上昇が自動で計算されるようになっています。

高熱があるとMRI検査を行えない

先の表には頭部温度、胴体温度、四肢温度という項目があり、それぞれで温度の上限が決まってます。

温度上昇の限度が1℃であるため、これらの温度上限から1℃引いた値、つまり体温が39℃以上あるとMRI検査を行うことはできないとされています。

高熱がある患者さんだとMRI検査はできません。

なぜヒートテックがダメなのか

もし冬場にMRI検査を受けると、必ず『ヒートテックを着ていないか』と聞かれます。

MRI検査時に、ヒートテックを始めとする吸湿発熱繊維性の衣類を着てはいけません。

これは先の章で説明した、『MRI検査時の発熱』が関わっています。

吸湿発熱繊維

吸湿発熱繊維の原理ですが、人体は不感蒸泄といって必ず一定量の汗を書いています。

体格や体温によって異なりますが、500~800ml程度の量になります。

この水蒸気を繊維表面で吸収し、水蒸気が水分となるときの凝縮熱を利用して熱を発生させています。

MRI検査時の体温上昇ループ

先の章で説明したように、MRI検査時には多少なりとも体温が上昇します。

この熱効果は人体の中心から半径方向の距離の2乗に比例しており、つまり身体の中心部よりも体表のほうがより暖かくなります。

すると、

熱くなって発汗する
→ ヒートテックの効果によってより熱くなる → さらに発汗する

と進んでいきます。

また、体表に汗(水分)があると身体と汗との間でRFパルスは渦電流を形成します。

この渦電流により、体表ではさらに温度上昇が進みます。

このように、ヒートテックを着ていると体温上昇がループのように進んでしまうことがあるため、MRI検査時には必ず着替えるように指導します。

まとめ

MRI検査時の体温上昇と、ヒートテックを着てはいけない理由を解説しました。

特に冬場は多くの患者さんが着ており、最近はインナーのほかにもタイツや靴下タイプなどもあります。

思わぬところに着ていることがありますので、もし検査担当となった場合は注意が必要です。

参考)
MRI集中講習~MRI専門技術者認定試験にチャレンジするためのテキスト~. 三恵社
MRI安全性の考え方 第2版. 秀潤社
IEC規格(改訂第三版)

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