MRIの基本とポイント

MRI検査室内で気分が悪くなる?放射線科医が解説する磁場酔いの正体

「MRIの部屋に入ると筋肉がピクピクする」
「MRI装置に横になる時に、ふらっとめまいを感じた」

MRI検査を受けた患者さんから、こうした感想を聞くことがあります。
急に感じるので、不安になってしまうのだと思います。

筋肉のぴくつき(不随意収縮)やめまいといった症状は、
磁場にさらされることで生じる磁場酔いという一過性の症状です。

MRI検査が終わり検査室から出ると、症状はすぐに収まります。

医者たるもの
「一過性の症状で、部屋から出たらすぐに消えますよ」
と断言して、患者さんの心配を取り除くようにしましょう。

今回はこの磁場酔いについて解説していきます。

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そもそも磁場酔いってなに?

CT検査における被ばくと同じように、MRI検査で磁場にさらされることで身体に何か影響がでるのではないか、ということは古くから研究されてきました。

研究の過程で、短時間磁場にばく露することで、一過性にさまざまな症状が生じることがわかりました。
この一過性の症状をまとめて、磁場酔い、といっています。

最も多いのは、磁場の中を移動する際に生じる、めまい吐き気頭痛といった症状です。

ファラデーの法則

磁場の中を移動すると、体内に電流が生じます。
この電流が磁場酔いに関係しています。

高校生の時に、ファラデーの電磁誘導の法則を習ったことはないでしょうか。
コイルを貫く磁界に変化が生じると、コイルに電流が生じます。
このコイルが人の身体に相当します。

MRI検査室内の磁場は場所によって変化するため、検査室内を移動すると身体を貫く磁界が変化し、体内に電流が発生します。
この電流によって末梢神経が刺激され、さまざまな症状が生じます。

ファラデーの電磁誘導の法則では、発生する電流は磁場強度の時間変化率によって決まります。

磁場強度の時間変化率ってなに?

磁場強度の時間変化率というとややこしく感じますが、時間あたり磁場がどれくらい変化するのか、という意味です。

実は検査室内で磁場が一番変化するのは、MRI検査装置のトンネルの入り口付近です。
ここでは傾斜磁場が急激に変化しています。

頭部や腹部など多くのMRI検査では、頭からトンネルに入っていきます。
そのためMRI検査装置のベットに横になる際、頭を急激に動かすと電流が体内に流れ、めまいなどの磁場酔いを生じます。

MRI検査室内では意識してゆっくり動くようにすれば、磁場酔いは生じにくくなります。

患者さんだけでなく、診療放射線技師も医者も磁場酔いになります

患者さんだけでなく、診療放射線技師や医者、看護師といった医療従事者も磁場酔いになります。

実際に検査を行う診療放射線技師は特に多く、労働安全衛生総合研究所が行った調査では、約20%の診療放射線技師が磁場酔いを経験したことがある、と回答していました。

特に頭部MRI検査では、磁場変化が強いトンネル入り口付近で患者さんの頭の固定を調整することが多く、診療放射線技師にとって磁場酔いが生じやすい状況です。

まとめ

MRI検査で経験することのある、磁場酔いについて解説しました。

がんの術後など繰り返しMRI検査を受ける患者さんの中には、不安に思っている人もいます。

もし聞かれたらあくまで一過性の症状であることを説明し、患者さんの不安を取り除くようにしましょう。

参考)
MRI集中講習~MRI専門技術者認定試験にチャレンジするためのテキスト~. 三恵社
MRI安全性の考え方 第2版. 秀潤社
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