MRIの基本とポイント

MRI検査で使用する薬剤:筋肉注射ないし内服する前投薬

MRI検査では、造影剤以外に患者さんに投与する薬剤があります。
それは前投薬です。

MRIの画質を改善するために使用し、
実際に患者さんに筋肉注射したことのある先生もいると思います。

前投薬としては主に3種類ありますが、
特に筋肉注射するブスコパンは禁忌や重篤な副作用が多く
患者さんに既往歴など確認しなければなりません。

今回は、MRI検査で使用する前投薬、についてまとめました。

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前投薬を使用する理由

MRI検査で前投薬を使用する理由は、

・腸管の蠕動を抑えるため
・水の信号を抑えるため

の2つです。
どちらもMRI画像の画質に大きく関わっています。

腸管の蠕動を抑える

腸管の平滑筋は常に収縮運動を繰り返し(蠕動運動)、食物を肛門側に移動させます。

CT検査であれば腹部は5秒程度(最新の機種であれば1秒以内)で撮影することができ、腸管はほぼ静止している画が得られます。

MRI検査では1つのシーケンス撮像に1~2分程度かかり、どうしても腸管が蠕動のため動いてしまいます。

腸管がぶれるだけならまだ良いのですが、例えば胆嚢に横行結腸が接している場合、横行結腸の蠕動によって胆嚢も一緒に動いてしまいます。
もし胆嚢に病変があれば、蠕動によって評価できなくなる恐れがあります。

そのため特に腹部のMRI検査では、蠕動を抑える必要があります。

基本的にブスコパンとグルカゴンの2種類の薬剤が使用されます。

水の信号を抑える

MRCP(Magnetic Resonance cholangiopancreatography、磁気共鳴胆管膵管撮像)では、腸管内の水の信号を抑えることがとても重要です。

MRCPはheavy T2という撮像法が使用され、水(胆汁や膵液)の信号を極めて高くします。
そのため、胃や十二指腸内に水分があるとこれらも強調され、胆管や主膵管に信号が被って読影困難になることがあります。

特にMRCPでは絶食するため、患者さんは水分をよくとっていることが多いです。

基本的にボースデルという薬剤を使用します。

前投薬の投与方法

ブスコパン、グルカゴン

静脈注射、筋肉注射どちらも可能ですが、筋肉注射されることが多いです。

静脈注射では血流に直接薬剤が乗るため素早く効き、また代謝されて効き目がなくなるのも早いです。
筋肉注射では静脈注射に比べ効果がでるのに時間がかかり、効果が消えるのもゆっくりです。

MRI検査はそもそも時間がかかるため、筋肉注射されることが多いです。

ボースデル

ボースデルは飲み薬(250ml)で、患者さんに経口内服してもらいます。
水分が胃や十二指腸から流れることは全く問題ないため、検査前に患者さんに飲んでもらいます。

ブスコパンの作用機序と禁忌

作用機序

ブスコパンは抗コリン薬の1つで、アセチルコリンの作用を抑制します。
そのため副交感神経機能も抑制され、腸管蠕動が低下します。
腸炎や尿路結石による腹痛にも使用されます。

投与禁忌

ブスコパンには有名な禁忌が複数あり、解説していきます。

緑内障の患者さん

緑内障にはいくつか種類がありますが、閉塞隅角緑内障でブスコパンは禁忌です。

副交感神経が抑制されると散瞳が生じます。
散瞳することで虹彩根部が隅角を塞ぎ、房水流出が妨げられ眼圧が上昇します(急性緑内障発作)。

患者さんは自分の緑内障のタイプを覚えていないことが多く、特に他院の眼科に通院している場合はカルテを見てもはっきりしません。
緑内障の既往があれば、投与を中止したほうが無難だと思います。

前立腺肥大による排尿障害がある患者

副交感神経機能が抑制されると、膀胱収縮も抑えられ排尿しにくくなります。
もともと前立腺肥大による排尿困難があると、ブスコパンを使用することでさらに難しくなり、尿閉となることもあります。

重篤な心疾患のある患者

副交感神経が抑制され交感神経が優位になると、心拍数が上昇します。

拡張型心筋症などでは収縮能の低下を心拍数で補っており、ぎりぎりのバランスを保っています。
そのためブスコパンを投与して心拍数が増加すると、バランスが崩れ心機能が一気に増悪することがあります
同じように、不整脈のある患者さんにも投与は控えた方が良いです。

出血性大腸炎の患者さん

出血性大腸炎など一部の重篤な細菌性腸炎の患者さんも、ブスコパンは禁忌です。

出血性大腸炎では抗菌薬を使用せず、点滴による電解質、水分の補給が治療の基本です。
抗コリン薬で腸管蠕動が抑制されると、下痢が無理やり止められ、便中の菌も体内にとどまってしまいます。

グルカゴンの機序と禁忌

作用機序

グルカゴンは消化管平滑筋に作用し、蠕動運動を抑制します。

投与禁忌

カテコラミン分泌作用があるため、褐色細胞腫の患者さんには禁忌です。

血糖値を上昇させる作用があり、インスリン分泌誘発によるその後の低血糖も副作用として報告されています。
そのため、糖尿病がある患者さんには慎重投与となっています。

一方で、抗コリン薬(ブスコパン)で禁忌となる緑内障や前立腺肥大、重症心不全の患者さんなどに使用することができます。

薬価としてグルカゴンの方が高いため、基本的にはブスコパンを使用することが多いです。

ボースデルの機序と禁忌

作用機序

ボースデルには塩化マンガンが含まれています。

マンガンは常磁性体であり、組織のT2時間を短縮させることでT2WIで信号を低下させます(陰性造影効果)。
T1時間も短縮させるため、T1WIではむしろ信号が高くなります(陽性造影効果)。

投与禁忌

ボースデルが禁忌とされているのは、消化管穿孔の患者さんです。
消化管外に漏れることで腹膜炎を起こすことがあるためで、胃透視で使用されるバリウムと同じです。

まとめ

MRI検査で使用される前投薬についてまとめました。

おもに使われるのは3種類だけですが、目的や投与方法は異なります。

自分で投与することもあると思いますので(特に筋肉注射)、禁忌に関しては覚えておいて下さい。

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