放射線科医というと、
「暗い部屋でCT画像を見ている」
「手術着を着ている」
「外来をしている」
など、人によって様々なイメージがあると思います
放射線科は大きく画像診断、IVR、放射線治療という3つの領域に分かれています。
他の科でも、医者によって専門領域は異なります。
例えば、消化器内科では食道が専門の人、肝臓が専門の人、膵臓が専門の人といったように、主に臓器によって専門性が決まります。
ただ放射線科の場合、臓器の違い以上に、3つの領域で仕事の内容がまったく異なります。
僕は画像診断を専門としている放射線科医ですが、最初はIVRも放射線治療も研修しました。
そこで今回は、放射線科の各領域について解説していきます。
画像診断:放射線科の基本
放射線科の3つの領域の中で最も人数が多く、また研修医や他科の先生にも想像しやすいのが、この画像診断領域だと思います。
検査した画像を見て(読影して)、その内容をレポートにまとめる、という仕事をしています。
画像検査は身体の全身に対して行われるため、画像診断では全身の解剖、疾患を知っておく必要があります。
患者さんと直接関わる機会はIVR、放射線治療と比べ非常に少ないですが、総合内科のように広範な知識が必要です。
日常では、読影室という専用の部屋で読影をし、パソコンでレポートを書いています。
IVR:やや外科系に近い
IVRとは”Interventional Radiology”の略で、日本語では”血管造影”と訳されます。
X線装置や超音波画像、CT、MRIなどの装置を使用しながら、体内に細い管(カテーテル)を入れて、診断、治療の双方を行います。
患者さんの体内に装具を入れるため、基本的に手術着を着て、清潔操作を行います。
実際のところ、血管造影という手技を行うのは、放射線科だけではありません。
循環器内科の心臓カテーテル検査や脳神経外科の脳血管造影と、手技としては同じです。
また、IVRと画像診断は業務としては重なりが大きいです。
画像診断をしている先生もIVRを行いますし、IVRが専門の先生も画像診断を行います。
これは、専門医資格が関係しています。
放射線科の場合、日本医学放射線学会に入会後、まず放射線科専門医をとります。
その後は大きく2つに分かれ、放射線診断専門医と放射線治療専門医のどちらかに進みます。
IVRは放射線診断専門医の中に含まれているため、IVRが専門の先生も放射線診断専門医を取得します。
そのため、細かな専門は別にして、基本的に画像診断とIVRはどちらもできる先生が多いです。
放射線治療:完全独立
放射線治療は主に悪性腫瘍を対象とし、放射線を当てることで根治ないし症状の緩和を目指します。
よく言われるのが、”切らずに直す”、という言葉です。
昔は放射線を大量にあてるため合併症が多かったのですが、今は少ない放射線量で充分な効果を出す技術が確立しています。
そのため、現在では手術、化学療法に並ぶ、悪性腫瘍の治療法の1つです。
手術や化学療法に比べると負担が少なく、臓器の機能も温存できるのが特徴です。
特徴として、多くの施設では外来を行い、患者さんを定期的にフォローしています。
放射線治療では合併症が起こることがあるのですが、すぐではなく数ヶ月、もしくは数年以上経過してから生じることがあります。
時間をかけて外来で見ていきます。
そうした意味では、内科系に近いです。
画像診断、IVRとは診療内容が全く異なり、また専門医資格の関係からも他の2領域とは独立性が高いです。
専用の治療装置も必要となります。
放射線治療を行うと、時間が経過してから副作用が生じることがあります。
そのため、診療科としては、放射線診断科とは別に放射線治療科としてある病院が多いです。
大学の講座としても分科が進んでいます。
まとめ
ややイメージしにくい放射線科の仕事を解説しました。
各領域によって仕事の内容はバラバラですが、逆に言えばいろいろな仕事をすることができる面白い科だと思います。
途中で別の領域に移動することも可能で、完全な転科ではないため動きやすいです。
何かのお役に立てたら幸いです。