読影レポートを書いていると、必然的に他人の書いた過去のレポートを見ることがあります。
そして思います、「読みづらい」、と。
すっと情報が入ってくるレポートを書かれている先生もいますが、個人的には読みにくいレポート率が高いように感じます。
落ち着いて見ている僕がそう思うのですから、忙しい外来の合間に見る依頼医は、非常に困っているでしょう。
彼らと話をすると、申し訳なさそうに、「診断欄しか見ていない」、と言われることが多いですが、これは僕たち診断医が反省すべき点です。
そうした「視認性」を良くするために、僕が普段気をつけていることを、話していこうと思います。
改行、改行
多いのが、つめつめで書いてあるレポートです。
こんな文章はどうでしょう。
右肺下葉に浸潤影を認める。気管支内に貯留物も認め、誤嚥性肺炎を疑う。左肺舌区に索状影を認め、陳旧性炎症性変化と考える。甲状腺左葉に結節を認め、腺腫を疑う。気管憩室あり。冠動脈に石灰化を認める。臨床症状と対比下さい。胸部領域のリンパ節に病的腫大は認めない。胸水なし。
ぱっと見たときに、情報が全く入ってきません。
ですが、適度に改行を入れることで、
右肺下葉に浸潤影を認める。気管支内に貯留物も認め、誤嚥性肺炎を疑う。
左肺舌区に索状影を認め、陳旧性炎症性変化と考える。
甲状腺左葉に結節を認め、腺腫を疑う。気管憩室あり。
冠動脈に石灰化を認める。臨床症状と対比下さい。
胸部領域のリンパ節に病的腫大は認めない。胸水なし。
先程よりは、かなり見やすくなったと思います。
文章ごと(句点ごと)にやると逆に見にくくなりますが、適度な改行で視認性はかなり改善します。
すぐでき、一番有用な方法だと思います。
書く順番
依頼医が一番欲しい情報を、最も欲しい情報を最初に書く、というのも1つの方法です。
例えば、悪性腫瘍の化学療法中であれば、
増大しているのか、縮小しているのか
遠隔転移があるのか、ないのか などなど
そうした情報を最初にまとめて書いて、肝嚢胞や胆嚢結石など、その他の所見は後に書きます。
こうすることで、重要な情報が一番最初に入ってくるようになります。
部位の説明
どこの部位について書いているのか明記する、というのも視認性を良くします。
具体的には「(胸部)」「(腹部)」など、文中に入れます。
(胸部)
右肺下葉に誤嚥性肺炎を疑う。その他の肺野に活動性炎症を疑う所見は認めない。
胸部領域のリンパ節に病的腫大は認めない。胸水なし。
(腹部)
肝、胆、膵、脾、副腎、腎に特記所見は認めない。
腸管に活動性炎症を疑う所見は認めない。
腹部領域のリンパ節に病的腫大は認めない。腹水なし。
このようにすることで、欲しい情報(今回で言えば肺炎の有無)がどこに書いてあるのかが、わかりやすくなります。
適度な改行と組み合わせることで、視認性は大幅に改善します。
まとめ:読影レポートの視認性に気をつけよう。
僕たち放射線科医の書いたレポートは、依頼医を通して、初めて患者さんに届きます。
逆に言えば、依頼医が読んでくれなければ、単なる自己満足で終わってしまいます。
診断も大事ですが、依頼医が読みやすいように、日頃からレポートの視認性、という点にも気を配っていきましょう。