放射線科医として、止血目的の緊急IVRの相談を受けることがあります。
救急外来を外傷で受診した患者さんや、術後の入院患者さんが多いです。
コンサルトを受けた時に、『この情報があるとIVRの適応や治療方針が決めやすい』という項目があります。
それは、単純CT+ダイナミック造影CT検査です。
この3相のCT画像があると、素早く判断することができます。
なぜこの情報が必要なのか、解説していきます。
この記事の目次
必要な画像は単純CT+ダイナミック造影CT(動脈相と平衡相)
救急外来からの依頼の場合は、
①外傷患者が運ばれてくる
②採血検査でHbが急激に低下しており、出血を疑う
③CT撮影
④(腹腔内などに)出血があり、止血のための緊急IVRを放射線科に依頼
という流れが多いと思います。
この中の「③CT撮影」では、必ず単純CT+ダイナミック造影CT(動脈相と平衡相)を依頼してください。
理由を解説していきます。
単純CTがないと造影効果があるのかわからない
よくあるのが、造影CTだけ検査されて単純CTは撮影されてない、ケースです。
出血を見ないといけないという意識から造影CTを依頼するのはまだ良いのですが、出血を疑った場合、単純CTは必須です。
血腫もCTで高吸収になるため、造影CTで高濃度でもそれが単に血腫なのか、仮性動脈瘤や造影剤の血管外漏出(extravasation)なのか、造影CTだけでは判断できないからです。
単純CTと比較してはじめて造影効果がある、と判断できます。
そして形態や2相の比較によって、出血しているか、が判断できます。
必ず単純CTも依頼してください。
動脈相、平衡相の2相ないと出血しているのかがわからない
造影CTも1相だけでは不十分で、動脈相と平衡相の2相必要です。
必ず「ダイナミックCT」で依頼して、2相撮影して下さい。
その理由は、1相だけでは出血かどうか判断できないケースが多いからです。
例えば子宮からの産後出血の場合、子宮の正常血管も発達しているため、動脈相で通常よりも強く造影されます。
そのため、動脈相のみでは出血点なのか正常血管なのか判別できません。
平衡相で造影剤の広がり(extravasation)を見て、初めて出血部位だと認識できます。
出血を判断するには、造影CTが2相(単純CTも含めれば全部で3相)必要となります。
動脈相、平衡相のタイミング
動脈相、平衡相のCT撮影タイミングは、施設ごとにあらかじめ決めてあることが多いです。
施設ごとのタイミングで十分で、特に指示する必要はありません。
出血だからといって、特にタイミングを変更する必要はないです。
ただ、臓器によって動脈相、平衡相のタイミングは違うため、診療放射線技師がどのプロトコルを選ぶかによります。
診療放射線技師にまかせれば大血管用のプロトコルを選んでくれることが多いですが、もし不安であれば検査目的に「出血精査」と記入してください。
CTでわからなければIVRの適応にならない
CTで出血点がわかって、はじめて緊急IVRの適応になります。
逆を言えば、出血点がわからなければIVRの適応には基本的になりません。
理由は2つあります。
①出血が止まっている可能性がある
②oozingはIVRでの止血が難しい
出血が止まっている可能性がある
出血はずっと続いているとは限りません。
自然に止血していることもあります。
後腹膜腔出血の場合、後腹膜腔は腹膜腔に比べれば狭く、血腫によって出血点が圧迫され止血される、というケースもあります。
出血部位がわからなければ、どの血管を止血すればよいのかもわかないため、IVRは難しいです。
oozingはIVRでの止血は難しい
出血は大きく、動脈性、静脈性、oozing(滲み出すような出血)の3種類に分けられます。
oozingは胃潰瘍の潰瘍面に認めるような滲み出るような出血のことです。
このoozingはIVRでの止血が難しいです。
動脈性の噴出するような出血ではないため、CTで出血点がわかりにくいです。
また、止血範囲が広くなる事が多く、正常臓器への血流も止めてしまうことがあります。
特に消化管出血であれば、内視鏡での止血がまずは選択されます。
患者の細かい情報も欲しい
放射線科としてコンサルトを受ける際は、患者さんの細かい情報も必要です。
性別年齢はもちろんですが、手術歴がないか、患者さんのADLはどうか、などが知りたいです。
術後であれば血管が処理されていることが多く、特に人工血管置換がされていれば動脈が別の部位に吻合されていることがあります。
多くの場合鼠径部から穿刺をしてカテーテルを進めていきますが、仰臥位(仰向け)になれなければ他から穿刺する場合もあります。
ある程度情報をまとめてから、コンサルトするようにしてください。
まとめ
緊急IVR(止血)を依頼される時に放射線科が欲しい情報、について解説しました。
絶対に欲しいのはCT画像で、単純CTと造影CT2相の3相です。
すべての症例がIVRの適応になるわけではなく、主にCTを見て判断しています。
患者さんの基本情報も必要ですので、可能な限りまとめてからコンサルトして下さい。
貴重なお時間の中、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。
何かのお役にたてたら幸いです。