偶然見つけた肺結節のフォローをどうするのかは、放射線科医にとっても悩みです。
「経過観察は不要です」と書くべきなのか、
「フォローして下さい」と書くべきなのか、
「何ヶ月後にフォローして下さい」と書けばよいのか、考え込むことが多いです。
以前、肺結節のフォローに関して、Fleishner Societyが2017年に発表したガイドラインを紹介しました。

日本では日本CT検診学会が、「低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と考え方 第5版」を出していて、今回はこちらを紹介します。
・「低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と考え方 第5版」のすべての診断基準にエビデンスがあるわけではなく、専門家の意見を加えたものになっています。
(第2版では題名に”ガイドライン”と書いてあったが、第3版以降削除されています)
・低線量CTによる肺がん検診自体の有効性とは、まったく別の話です。
前提となるお話
肺結節の種類
日本語で肺結節という場合、(充実性の)結節とすりガラス結節の両者を含んでいます。
細かな定義は以前の記事に書いているので、参考にして下さい。

フォローの際はthin slice CTを使用する
多くの施設では、通常の肺野条件CTは5mmスライスのことが多いですが、この判定基準では、全てthin slice CTで判断するように定めています。
増大の定義は2mm以上
増大した場合、治療方針は変更しますが、この判定基準のなかで増大は「2mm以上」と定義しています。
初回CTで6mm未満の場合、精密検査を必要としない
検診施設で肺結節を見つけた場合、6mm未満であれば精密検査は不要としています。
6mm以上(最大径と短径の平均)の場合に、他の医療機関に精密検査のため紹介する必要があります。
いずれの結節でも「肺がんを強く疑う」場合はすぐに確定診断を行う
結節の種類、サイズによって推奨するフォローの方法は異なっていますが、巨大な病変など「肺がんを強く疑う」場合は、すぐに気管支鏡やCTガイド下生検などの確定診断を行います。
(充実性)結節の場合
結節のサイズが≧10mmの場合と、6mm~10mmの場合で分けています。
≧10mmの結節
気管支鏡やCTガイド下生検など、すぐに確定診断を行います。
6mm~10mmの結節
高リスク(喫煙者)と低リスク(非喫煙者)に分けて考えます。
高リスク:3,6,12,18,24ヶ月後にthin slice CTによる経過観察を行う。
低リスク:3,12,24ヶ月後にthin slice CTによる経過観察を行う。
また、経過観察中の対応は共通です。
①増大(2mm以上)を認めた場合、確定診断を行う。
②2年間サイズに変化なければ、経過観察を終了する。
③消失した場合、その時点で経過観察を終了する。
part-solid GGNの場合
サイズが≧15mmの場合と、<15mmの場合で分けています。
≧15mmのpart-solid GGN
すぐに確定診断を行います。
<15mmのpart-solid GGN
内部の充実成分のサイズでさらに分かれます。
>5mmの充実成分
すぐに確定診断を行う。
≦5mmの充実成分
12,24ヶ月後にthin slice CTによる経過観察を行ういます。
経過観察中の対応は、以下の通りです。
①結節全体が2mm以上、もしくは充実部が2mm以上の増大を認めた場合、確定診断を行う。
②2年間サイズに変化なくても、年1回の経過観察を継続する。
③消失した場合、その時点で経過観察を終了する。
pure GGNの場合
part-solid GGNと同じく、大きさが≧15mmの場合と、<15mmの場合で分けています。
≧15mmのpure GGN
3ヶ月後にthin slice CTで検査し、全体のサイズが変化なしもしくは増大であったら、確定診断を行います。
<15mmのpure GGN
3,12,24ヶ月後にthin slice CTによる経過観察を行います。
経過観察中の対応は、以下の通りです。
①2mm以上の増大ないし濃度上昇を認めた場合、確定診断を行う。
②内部に充実成分が出現し、
・・充実部が>5mmの場合、確定診断を行う。
・・充実部が≦5mの場合、経過観察を続行。
③消失した場合、その時点で経過観察を終了する。
④24ヶ月後に変化がなくても、年1回の経過観察を継続する。
まとめ
肺結節のフォローに関して、日本で提唱されている「低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と考え方 第5版」を紹介しました。
以前の記事で紹介したFleishner Societyの提唱するガイドラインと比べると、少しややこしい内容となっています。
ですが、細かい分いろいろな状況に対応できるとも言えると思います。
放射線科医であれば、一度目を通しておいて良い内容と考えます。
貴重なお時間の中、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。