日常的に画像診断をしていると、肺結節を偶然見つけることはよくあります。
がん患者さんであれば肺転移をまずは考えますが、偶然見つけた場合、質的診断に悩み、最終的にレポート上で経過観察を勧めることが多いです。
そうすると問題になるのが、いったい何ヶ月後に再検査するべきなのか、ということです。
上級医の先生に聞いても、人によってフォロー期間はばらばらであることが多いです。
主治医に相談されることもあるので、放射線科医として推奨するべき期間を知っておいたほうが良いと思います。
そこで、肺結節を偶然発見した場合のフォローの基準についてまとめました。
肺結節の種類
日本語で肺結節という場合、
・(充実性の)結節
・すりガラス結節
の2つを含んでいます。
まず、両者の定義や違いについて解説します。
結節
結節とは円形ないし楕円形の結節性陰影のことで、サイズによって3種類に分類されます。
結節 | |
---|---|
粒状影(微小結節) | <5mm |
結節 / 結節影 | 5mm≦、<30mm |
腫瘤 / 腫瘤影 | ≧30mm |
粟粒影:粒状影が両肺びまん性に分布している状態。
塊状影:腫瘤影よりも大きく、辺縁がごつごつした状態。
すりガラス結節
すりガラス結節(ground-glass nodule:GGN)は、サイズではなく内部の性状によって2パターンに分けられます。
すりガラス結節 | |
---|---|
pure GGN | すりガラス影のみ |
part-solid GGN | すりガラス影+充実成分 |
偶然発見された肺結節の経過観察
偶発的に発見された肺結節をどの様にフォローするかは、ガイドラインによって様々です。
日本では、日本CT検診学会が出している基準がありますが(「低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方 第5版」)、part-solid GGNの充実部のサイズによって変わるなど、少しややこしいです。
そこで、日本CT検診学会も参照した、Fleishner Societyが2017年に発表したガイドラインを紹介します。
Fleishner Societyとは、胸部疾患の診断と治療を専門とする、胸部放射線医学のための国際的な医学会です。今回参照した肺結節のガイドライン以外にも、特発性肺線維症の診断基準なども出しています。
結節の経過観察
結節は、サイズ(<6mm,6-8mm,>8mm)、リスク(喫煙歴の有無など)、数(単発, 多発)によって分かれています。
単発の肺結節 | ||
---|---|---|
結節のサイズ | 低リスク | 高リスク |
<6mm | フォロー不要 | 12ヶ月後にCT |
6-8mm | 6-12, 18-24ヶ月後にCT | |
>8mm | 3ヶ月後にCT, PET/CTないし生検 |
多発結節 | ||
---|---|---|
結節のサイズ | 低リスク | 高リスク |
<6mm | フォロー不要 | 12ヶ月後にCT |
≧6mm | 3-6, 18-24ヶ月後にCT |
すりガラス結節の経過観察
すりガラス結節は、サイズ(<6mm,≧6mm)と性状、数(単発, 多発)によって分けられています。
pure GGN | |
---|---|
結節のサイズ | フォロー方法 |
<6mm | フォロー不要 |
≧6mm | 6-12ヶ月後にCT, その後2年に1回CTを5年間 |
part-solid GGN | |
---|---|
結節のサイズ | フォロー方法 |
<6mm | フォロー不要 |
≧6mm | まず3-6ヶ月後にCT ①変化なく, 充実部が6mm未満の場合 年1回のフォローを5年間 ②変化なく, 充実部が6mm以上の場合 生検ないし手術 |
多発すりガラス結節 | |
---|---|
結節のサイズ | フォロー方法 |
<6mm | 3-6ヶ月後にCT 変化なければ2年後, 4年後にCT |
≧6mm | 3-6ヶ月後にCT 最も悪性が疑わしい結節に準じてフォロー |
まとめ
偶発的に認めた肺結節のフォローに関して、まとめました。
フォローが必要ない病変にも言及しており、かなりシンプルになっているので参考にして下さい。
貴重なお時間の中、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。
何かのお役にたてたら幸いです。
参考文献)
・新胸部画像診断の勘ドコロ
・低線量CTによる肺がん検診の肺結節の判定基準と経過観察の考え方 第5版
・MacMahoon H, Naidich DP, Goo JM, et al. Guidelines for Management of Incidental Pulmonary Nodules Detected on CT Images: From the Fleischner Society 2017. Radiology. 2017 Jul;284(1):228-243.