この記事では、肺野条件の胸部CTを読影する方法について解説します。
胸部CTは腹部CTと並び、CT検査の中で最も数の多い検査です。
肺炎の有無など、日常的に画像検査を依頼し、自分で見ている先生も多いと思います。
【こんな人にオススメの記事です】
・どんな風に肺野を見ればいいか知りたい
・どんな所に注意すればいいのか知りたい
・早く胸部CTを読みたい
この記事の目次
そもそも肺野条件とはどういう意味?
具体的な肺野条件の見方の説明の前に、「肺野条件」という言葉の説明をしていきます。
それは、『肺野を詳しく見るために作った画像』という意味です。
まず患者さんにCT撮影を行うと、生データ(raw data)が得られます。
これは単なるデータで、まだ画像ではありません。
この生データに専用の関数をかけて(加工して)、肺野条件のCT画像ができます。
同じ生データに別の関数をかけてできるのが、縦隔条件の胸部CTになります。
縦隔条件のwondow level(WL)、window width(WW)を調整して、肺野条件に似た画像を作ることが可能です。
ただ、あくまで『似た画像』であって、『肺野を詳しく見るために作った画像』ではありません。
細かな結節などの読影には向いていません。
肺野条件のCTを読影するテクニック
スクロールしながら読影:1枚1枚読んではいない
読影する時は、1枚をじっくりと見るのではなく、パラパラと画像をスクロールさせながら見ていって下さい。
これは、上下のスライスとの間で『連続性』を確認するためです。
よく研修医の先生の中に、CT画像を1枚1枚じっくりと見て、何か病変がないか探している先生がいます。
肺の血管は体に対して縦方向に走っている事が多いです。
そのため、1枚ずつ読影していると、結節を見つけても、それが本当に結節なのか肺血管なのか判断できません。
1枚切り取った画像では区別ができないです。
放射線科医はスクロールして上下のスライスとの連続性を見て、これは結節なのか血管なのか判断していきます。
肺野を上から下までだいたい15秒で見ています
具体的な速度ですが、患者さんの体格や姿勢によって肺野のサイズは異なります。
そのため読影するスピードもまちまちですが、平均的な人(5mmスライスで50-60枚)を仮定して話をします。
おおよそ、『肺野を上から下まで15秒』ほどでスクロールさせています。
1秒3-4スライス程度のスピードです。
速い様に感じるかもしれませんが、病変を見つけるだけなら、これぐらいのスピードで充分です。
肺野を分割して見る
15秒で見ると言いましたが、もちろん両肺を一度に見ているわけではありません。
多くの先生が右肺、左肺と左右で分けて見ていると思いますが、放射線科医はさらに分割して見ています。
片肺を腹側と背側に2分割し、まず腹側を肺尖部から肺底部まで見る。
次に背側を肺底部から肺尖部まで見る。
といった順番で読影しています。
2分割する理由は、人間の視野は想像するよりも非常に狭いからです。
また、分割するのは上葉中葉下葉などは関係なく、真横に切ります。
全ての症例を2分割で見ているわけではありません。
例えば、直腸癌術後で肝転移があるの患者さんでしたら、術後で他に転移がない
患者さんよりも肺転移が生じる可能性が高いです。
その場合、さらに細かく3分割して見ています。
見つけたら手を止めて考える
スクロールしている中で、何かを見つけたら手を止めます。
それが粒状影なのか、結節影なのか、腫瘤影なのか。もしくは浸潤影なのか。
確認し、次に質的診断に移ります。
まとめ
縦隔条件の胸部CTの読影は、数も多く放射線科医としては基本となります。
上記のテクニックを使うことで、見落としを減らし、なおかつ早く読影することができます。
初めて胸部CTを見る人、読影が上手くいかない人は、ぜひ参考にして下さい。
貴重な時間の中、最後まで読んで頂き本当にありがとうございました。
何かのお役に立てたら嬉しいです。
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