画像診断のコツ

前立腺MRIを読影するコツ【若手放射線科医向け】

今回は、「前立腺MRIを読影するコツ」について、お伝えします。

前立腺MRIといってもほとんどが、『PSA高値のため前立腺癌精査』という前立腺癌を目的とした検査になります。

つまり、前立腺癌のMRI読影さえできれば、日常の画像診断にはほぼ困りません。

また、多くのシーケンスがありますが、ほとんど『T2WIとADC(DWI)』で事足ります。
前立腺MRIを初めて読影する若手放射線科医の先生に、そのコツをお伝えします。

僕は前立腺を専門にはしていません。
あくまで、普通の放射線診断専門医が一般病院で前立腺MRIを読影する際に気をつけていること、をお伝えしています。

前立腺MRI検査はほとんどが「前立腺癌」の検査

僕がいる施設でのデータになりますが、直近3ヶ月間で165件の男性骨盤MRI検査が行われていました。

このうち、142件が前立腺MRI検査で(23件は膀胱MRI)、そのすべてが前立腺癌の精査を目的として行われていました。

率にして、男性骨盤MRI検査の86%、前立腺MRI検査の100%になります。

単施設かつn数も少ないため正確とは言えませんが、傾向としては他の放射線科の先生も納得してくれると思います。

このデータから、

前立腺MRI検査のほぼ全ては前立腺癌の精査のため行われている。
つまり、前立腺癌の読影ができれば、日常の前立腺MRI検査の読影はほぼ事足りる。

と言えると思います。

前立腺癌を見つけるにはT2WIとADCが重要

前立腺MRI検査で一般的に撮像されるシーケンスとしては、T1WI、T2WI、DWI、ADC、脂肪抑制T2WIです(冠状断や矢状断を含む)。

造影を行うと、ここにダイナミックMRI(おおよそ4相程度)と平衡相が加わります。

前立腺癌を見つけるためだけであれば、全てを見なくても2つのシーケンスで十分です。
それは、『T2WI』と『ADC』です。

それぞれ解説していきます。

前立腺MRIのT2WI

前立腺癌の約75%は辺縁域から発生します。

辺縁域はT2WIで通常高信号を示しているのに対し、前立腺癌はT2WI低信号です。

そのためのコントラストが良好で、前立腺癌を見つけやすいシーケンスにあります。

冠状断や矢状断も撮像されていることが多いため、多方向から読影します。

前立腺MRIのADC

ADCもT2WIと同じ理屈になります。

T2WIで高信号を示す正常辺縁域は、ADCでも高信号を示します。

それに対し、前立腺癌は拡散制限を示すため、ADCでは低信号となります。

こちらもコントラストが良好で、癌の検出に有用です。

ADCやDWIは空気の影響を受けてしまいます。
前立腺の背側には直腸があり、腸管内に空気や便塊を伴っています。
そのため、検査前には患者さんに排便を促すのですが、どうしても直腸内に空気が残ってしまい、ADCやDWIが歪んでしまうことがあります。
そのため、基本はT2WIでまず探します。

移行域の前立腺癌は画像診断が難しい

ここまで辺縁域の前立腺癌について話してきましたが、移行域の前立腺癌は画像診断がとても困難です。

高齢者の場合、前立腺肥大症を伴っていることが多く、肥大結節と鑑別が必要になります。

教科書的にはT2WIで帯状の低信号があると肥大結節、ないと前立腺癌を疑う、などの記載がありますが、実際のところ両者の鑑別は非常に難しいです。

移行域病変は、画像診断できないことのほうが多いです。

疑い病変を書くにとどめ、最終的には生検にまかせましょう。

前立腺癌の診断にはT1WIとダイナミックは見なくても大丈夫

前立腺MRIのT1WI

前立腺癌の診断において、単純T1WIが役に立つことはほぼありません。

正常辺縁域はT1WI低信号で、前立腺癌も低信号です。

造影MRIであれば、単純T1WIと造影T1WIを比べることで造影効果を確認するはできます。

けれど、単純MRIの場合、前立腺癌の診断のためにT1WIを見ることはほぼ無いです。

前立腺MRIの造影ダイナミック

専門の先生に怒られそうですが、ダイナミックMRIもほとんど見なくて大丈夫です。

教科書的には、「ダイナミックの早期相で濃染、後期相でwash outを呈する」、とありますが、前例ではなく約50%程度です。

移行域では肥大結節も造影されるため、前立腺癌との鑑別は困難です。

あくまで、「T2WIやADCの補助」という認識で良いと思います。

注意して見るのは、PI-RADSを記載する時ぐらいです。

生検後は前立腺癌の画像診断は難しい

生検で前立腺癌を見つけた後に、「精査のため」MRI検査を依頼してくる場合があります。
ただ、生検をするとかなりの確率で出血を生じます。

T1WIだと高信号を示しており、よくわかります。

出血の影響もあり、生検後だとT2WI、ADC、ダイナミックいずれも詳細な診断ができなくなります。

その場合、素直に『生検後の出血の影響のため、詳細な診断ができません』と書きましょう。

まとめ

前立腺MRI検査は、ほとんどが「前立腺癌」精査のために行われています。

前立腺癌自体は、T2WIとADCを注意して見れば十分見つけられます。

2つのシーケンスで見つけられない癌もありますが、それは他のどのシーケンスでも診断は困難です。

以上、前立腺MRI検査の特徴とその限界について話しました。

何かのお役にたてたら幸いです。